アーチ株式会社の研究開発部門「Arch Research」では、コンピュータ科学の専門家たちが、アニメ制作の現場で使えるソフトウェアのツール開発を行っています。
これは、既存のアナログ工程をデジタル化することではありません。絵コンテを描くなら紙とペンくらい手軽でないと困るという方は多いでしょう。時間を測るなら、いつでもそこに置いておけるストップウォッチがよいと考える方もいると思います。私たちはいつも、クリエータの方々との対話のなかで、その「よさ」がどこからくるのか調べるところからツール設計を始めます。そして、換骨奪胎した「よさ」にソフトウェアならではの強みをかけあわせてツールを実装します。
私たちは、使い勝手のいいソフトウェアをつくる難しさを知っています。一般的なソフトウェア開発にかかる時間の半分は、自動化のアルゴリズムやモデル設計といった内部のしくみづくりではなく、グラフィカルユーザインタフェース (GUI) 設計に割かれているという調査があります[1]。クリエイター向けのツールでは一般的でないユーザインタフェースが多くなりますから、その難易度はもっと上がりますし、もっともっと多くの時間がかかるわけです。実際、私たちの絵コンテ制作ツールは「複雑GUI」[2]のかたまりです。アナログの絵コンテ様式の特徴を、実例を調べ、ときに歴史をひも解き、ときに西欧のストーリーボードと比較検討しながら、丁寧に研究開発を進めています[3]。
昨今の情報技術は日進月歩で、次々目新しいものが出て目移りしてしまいます。私たちは、ただでさえツールをつくる側と使う側の間にある権力構造[4]が、ますます強まってしまう時代に生きています。そういった技術を現場で活かせるようにするには、コンピュータ科学の最先端を知り、クリエータの方々と対話し、使い勝手のいいユーザインタフェース設計にねばりづよく取り組む研究開発が必須だと、私たちは考えています。
ツールをつくる私たちと、アニメ作品をつくる果てしない旅路をご一緒しませんか。
旧称 Griffith Stopwatch。アニメ制作に特化したストップウォッチです。無料で一般公開しています。リンク先ですぐに使えます。
旧称 Griffith。2025年 一般公開予定で開発中の、アニメの絵コンテ制作ツールです。 Arch Research のプロジェクトページに遷移します。
私たちは、アニメ作品を「つくる」方々と対話を重ねながら、アナログ工程のデジタル化に留まらない、優れたユーザインタフェースを備えたツールを「つくる」ことを目指しています。 2種類の「つくる(Craft)」が「いいアニメ作品づくり」というゴールを中心に同心円で重なり広がるイメージを「AnimeCraft」というブランド名に込めました。